愛する部屋 とは?
「交差点に立った日々のこと」
いつかは終わる旅が、知らず知らずのうちに始まった。
ここまで、いくつもの上り坂を歩き、いくつもの砂利道を歩き、そして、いくつもの交差点に立ったと思う。
旅を始めたばかりのころは、きっとみんなも歩いたことのある道を歩いていた。誰しも歩いたことがあるからか、初めて出会ったのに、どこか懐かしい雰囲気があった。どんな絵柄であろうとドラえもんはやっぱりかわいいし、アンパンマンはやっぱり面白かった。プリキュアは今でも「がんばれー!」とライトを照らして応援したくなる。
道は、誰かが歩くから出来るものもあれば、誰かに歩いて欲しいから、誰かが必要としているから出来るものもある。
元からそこにあった道もあれば、山道から街に降りやすいように出来た道もある。
21世紀は、小さい子どもにだって、いろんな道が与えられていたし、いろんな道を歩いても良かった。『幼稚園』『小学一年生』のような幼児向け雑誌はまさに、いろんな道を示す地図だった。
私もみんなと同じように地図を使い、ある道をずんずん進んだ。目が大きくて、可愛いアイドルがキラキラするアニメに出会った。
そう、『きらりん☆レボリューション』だ。
そして、月島きらりの声を務めた久住小春さんを通し、私はアイドル、モーニング娘。に出会った。
その道は、あまりみんなが歩いていた道ではなかったようだ。少なくとも、周りに私の友達は見えなかった。
でも、家族はその道をたくさん歩いていたようだ。楽曲やMVを沢山見せてもらった。とにかく楽しかった。友達が知らなくたって、モーニング娘。は紛れもなく可愛かったしモーニング娘。の曲は良い曲だったしキラキラしていた。常に全力笑顔を見せるモーニング娘。が大好きだった。
モーニング娘。が所属している事務所の他のアイドル、というとまどろっこしいのでハロプロのアイドルにも触れた。Berryz工房や℃-ute、Buono!などだ。特に、Buono!はしゅごキャラ!の主題歌を通して触れる機会が多かった。
モーニング娘。は、全盛期のときよりはあまりテレビで見なくなったらしい。親から聞いた。でも、他の人が好きかどうかなんて、小学生の私にはどうでも良かった。家族は理解してくれているし、ハロプロはたまにテレビ見かけるし、それでいいじゃんって思っていた。
そんなときに、AKB48が台頭した。
“人気”の凄さというものは、AKB48に教えられた。
選抜総選挙という、テレビで放映されるまでになったビッグイベント。じゃんけん大会をするだけで日本武道館を埋めてしまう。選抜総選挙で上位に入るようなメンバーは、ゴールデンのドラマで主演を務められる。
人気があるって、こんなに凄いんだ。
AKB48の爆発的なヒットで、初めて、勢いの凄さというものを事実としてではなく、身体で感じることが出来た。
私もAKB48にハマった。なんてったってみんな個性的。ドラマがある。
凄いなぁ。と思っていた。
こんなの、みんな楽しんでいるに決まっているじゃん。
そう思って、ふと周りを見た。
みんな楽しんでいる訳じゃなかった。
誰々が嫌いだ、誰々の方が良い、そんな負の感情も沢山見えた。
インターネットじゃない。クラスでも沢山聞いた。
人気があるということはたくさん嫌われること。身をもって知った。
その日から、どんな道にも、負の感情はあり、楽しいだけじゃないということを知った。
学校だけじゃなくて、アイドルでもこんな、いじめのようなものがあるのかと、分かった。
でも。
「私のことは嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください!」
前田敦子さんの2011年選抜総選挙でのスピーチを聞いて、苦しい道を歩くことの格好良さを知った。
あっちゃんのことは好きでも嫌いでもなかったけど、本当にかっこいいと思ったし、あっちゃんを嫌う人よりあっちゃんの方が何倍もかっこいいなと思った。
この日以来、AKB48のファンの中でも、あっちゃんへの印象が変わったように感じる。
アイドルは、嫌われても立ち上がっていた。何度でも何度でも。
道重さゆみさんだって、ぶりっこだと嫌われてもめげずにテレビに出続けた。そして、リーダーとしてモーニング娘。をまとめ、ぶりっこから芯のあるしっかり者へ、お茶の間の印象を変えた。
嗣永桃子さんだって、どれだけ嫌われても、ももちでいることを辞めなかった。みんなを笑顔にすることを諦めなかった。そして、引退のときには、多くの方から惜しまれる、伝説のアイドルになった。
今、具体的な名前を挙げていない様々なアイドルも、様々な声を打ち破り、立ち上がった。
私は何度も立ち上がる姿を見た。私も、落ち込もうが嫌われようが立ち上がれる人になりたいな、と思うようになった。
その思いは私を変えた。いじめられても、明日も学校に行こうと思った。悪口を言われたら笑いになるように言い返そうと思った。
だから、ずっとアイドルに感謝していた。アイドルは本当に凄いと思っていた。
でも、私のアイドルの好きなところも、よく思わない人がいた。
人の傷つくところを売り物にするなんて。
アイドルなんて所詮大人の操り人形だ。
年を重ねるにつれ、色々な声が聞こえてきた。
小中学生のときには揺らがなかった信念も、高校生のときには揺らいできた。
今までは他の人なんてどうでも良かったけど、他の人と生きていかなければいけないことを学んだ。
高校での挫折をきっかけに、アイドルを少し引いて見るようになった。
色んな声を聞いた。
アイドルは、今まで転んでも立ち上がるからかっこいいと思っていた。
そもそも転ばないのが1番強いんじゃないのか、という声も聞こえた。
そうは思えなかったけど、周りが言うのなら、そうなのかもしれないな、と思った。
でも、自分はやっぱりそう思えないし、そういう価値観を持っている人と思われたくないなと感じた。
アイドルを好きでいるから、アイドルが苦しむんじゃないのか。
そんな声も聞こえた。
アイドルは不健全な職業だ。という声も沢山聞いた。
色んな人の声を聞くことが辛くなった。自分の価値観は、これからの時代には合わないんじゃないかと思った。
実際、その人達が褒めているアイドルや、その人達の価値観とは全く合わなかった。
アイドルのファンを辞めてしまおうと思った。
アイドルは何にも悪くないけど、アイドルの道を歩いていると、息苦しくなってしまったから。
アイドルは、合わない価値観の人が多くなるくらい、大きくなってしまったんだ、これからは、いったん距離を置いて生きようと思っていた。
アイドルの道から、他の、全く関係のない道を歩もうとした。
2020年、浪人をほぼ終えていたとき、この動画に出会った。私が好きなパフォーマンスがそこにはあった。
あれ、この人が売れるかどうか確認してからで良いんじゃ?
あっさりアイドルファンを辞めることを辞めた。
アイドルはやっぱり好きだから。応援したいと思う方がいるなら、当然アイドルのファン続けちゃうよね。
価値観が合わない人とはどうやっていくつもりなんですか?
分からない。でも私の価値観が間違っているとは言わせたくないなって思ってしまった。
私が良いと思うものは良いんだ。私が良いと思うことで、アイドルの生活が少しでも良くなるかもしれないんだ。
そんなこんなで、アイドルを好きになって15年以上が経った。
やっぱり、アイドルの1番好きなところは、悲しみを背負って、それに打ち勝っていくところだ。
私もアイドルのそういう姿を見て、幾度となく訪れた困難を乗り越えたり、乗り越えられなかったりした。楽しい人生になった。
それは変わらない。どれだけ多くの人の価値観と合っていなかろうが、私はアイドルに支えられた。
でも、自分と合わない価値観を知ることが出来たから、私は旅を始められたんだと思う。困難のない旅はないから。
困難があったら、それを乗り越えれば良いんだ。
アイドルがくれた術を使って、これからも、きっと、楽じゃないけど楽しい旅は続いていく。
私だけの旅なので、当然希少価値が高い。やったね。
この文章は、私の想いのほんの一部でしかありません。
でも、ほんの一部でも、知ってくれてありがとうございます。
読んでくれて、本当にありがとうございます。
いつも、支えられていますよ。
どるちょ
アイドルファン歴15年以上の大学生。最近はWACK、とき宣、Ringwanderungのパフォーマンスが好き。